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実用的な制御−制御の基礎

制御(サーボやPLL -- フェーズ・ロックド・ループ)の設計って結構難しく思われています。
その理由は、たぶん制御の専門書って理論が多くて実用的な設計方法が書いてないからだと思います。
今まで実用的な制御設計方法を書いた本を見たことがありません。
制御設計は、日本は海外に対して強いと思います。海外にノウハウは漏らしたくありませんが、日本の設計技術向上のため海外のエンジニアが読めない日本語で実用的なことを少しずつ書いてみます。

制御の専門書は、ラプラス変換から書いてあることが多く、それが入門者のハードルを高くする原因ではないでしょうか。
私は制御の基本は高校の数学で習う微積分と、同じく高校の物理で習うニュートンの運動方程式だと思っています。そう思うとハードルが低くなるでしょう。

私が新入社員などに望む技術レベルは高校卒業レベルです。でも大学を卒業して入社してくるエンジニアに高校の数学問題と物理問題を出すと解ける人が極めて少ないのが実態です。
優秀なエンジニアになりたかったら少なくとも高校の数学と物理を、更にもう一つ要求すると小学校の算数をしっかりと理解しておいて欲しいものです。

余談はさておいて、例えばCD(コンパクト・ディスク)で1本のトラックジャンプさせる場合についてどのように設計するかを説明します。
CDのトラックピッチは1.6μmです。従ってトラックのセンターまで0.8μmです。
トラックを横切ると光PUからトラッキングエラー信号が出ますが、トラッキングエラー信号は正弦波状あるいは鋸歯状ですので、トラッククロスポイントでは0になります。

例題:
トラックジャンプのために、2G(19.6N/m2)の一定加速度で加速したとします。
0.6μm加速し、トラックセンターまでの0.2μmをフリーラン(加速度=0)で飛ばし、加速時と同じ加速度で0.6μm減速し、次のトラックの0.2μm手前で止めて、残りをサーボ力で引き込むとすると加速時間、フリーラン時間、減速時間はそれぞれいくらでしょうか。

サーボの問題ですが、高校の数学か物理の問題みたいでしょう。

加速度を a 、速度を v 、位置を χ とすると
 v=∫adt=at (aは一定値)
 χ=∫vdt=1/2 at2 となります。
0.6μm飛ぶ時間を t1 とすると、
 t1=√(2χ/a)=√(2×0.6×10−6×19.6)=0.2474×10−3
   =247.4 [μs]
0.6μm飛んだ後の速度を v1 とすると、
 v1=19.6×247.4×10−6=4.849×10−3
0.2μm飛ぶ時間を t2 とすると、
 t2=0.2×10−6/4.849×10−3=41.2×10−6
   =41.2 [μs]
0.6μm減速する時間 t3 は
 t3=t1=247.4 [μs]

このようなトラックジャンプはフィードバックがかかっていないのでオープンループ制御と言います。
そしてオープンループ制御は微積分とニュートンの運動方程式を使って解くのが基本となります。

このように算出した加速、減速時間とトラッキングエラーのゼロクロス検出をマイコンなどで実現すれば上手にトラックジャンプさせることができます。
またフリーラン時間は固定値ではなく、トラッキングエラーのゼロクロス検出までの時間にします。
そうすれば加減速加速度がばらついたとしても、減速時のゼロクロスからの到達距離で着地点が決まるのでばらつきに強くなります。
≪続く≫
 
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